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ゼンハイザー、世界初の広帯域双方向デジタルワイヤレスエコシステム「Spectera」を発表

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ゼンハイザージャパン株式会社(代表取締役:宮脇 精一)の親会社であるゼンハイザーグループは、2024 年 9 月 13 日から 16 日にオランダ・アムステルダムで開催された 「IBC 2024」において、世界初の双方向広帯域のソリューションである「Spectera」を発表しました。

デジタルワイヤレスオーディオ伝送システムが新たな時代を迎えようとしています。画期的なWMAS(Wireless Multichannel Audio Systems)テクノロジーを採用したSpecteraは、ワイヤレスシステムの煩雑さを大幅に解消すると同時に、性能も大幅に向上しました。ワークフローの時間を節約し、スペクトルセンシングなどの完全リモートでの管理や監視を可能にします。Specteraでは、デジタルIEM/IFBとマイク/ライン信号の両方を同時に管理する、双方向ボディパックが採用されています。RFフェーディングへの耐性が非常に優れており、広帯域RFチャンネルを柔軟に利用できるため、例えばデジタルIEMではレイテンシを0.7ミリ秒にまで低減できます。

同じ広帯域RF チャンネルでマイクとIEM オーディオの両方を処理しながら、データ管理も可能なSpectera SEK ボディパック
同じ広帯域RF チャンネルでマイクとIEM オーディオの両方を処理しながら、データ管理も可能なSpectera SEK ボディパック

ゼンハイザーの共同CEO であるアンドレアス・ゼンハイザー(Andreas Sennheiser)とダニエル・ゼンハイザー(Daniel Sennheiser)は、次のように述べています。
「数年間にわたるテクノロジーの発展を経て、周波数ポリシーへの取り組みがデジタルワイヤレスのエコシステムへと結実し、ワイヤレスマルチチャンネルのユーザーが現在直面しているたくさんの問題を解決できるようになり、喜ばしく思います。当社の広帯域ソリューションはツアー用、放送用または劇場用の分野、あるいはマルチチャンネルのオーディオ設定が必要な他の領域のいずれにおいても大規模な制作に適しています。Spectera は、使いやすさや運用での信頼性および柔軟性に関するお客様の主要な希望とニーズに対応します。Spectera は少ないハードウェア数で、周波数の調整作業と冗長さを大幅に削減し、ニーズに応じて拡大する柔軟なエコシステムです」

WMAS の活用 – 広帯域アプローチ
双方向の広帯域伝送は、ワイヤレスオーディオシステムのユーザー、オペレーターおよびオーナーが日々直面する多くの課題に対処します。例えば、多数チャンネルでのきわめて煩雑な周波数調整、ラックでの複雑なケーブリングやツアーおよびバックステージなどでの搬入出および構成にかかるコスト(多くのスペースや長い時間)といった問題です。これらはマルチチャンネルのワイヤレスシテムが依然として抱えている課題でもあります。

双方向の広帯域伝送により、マルチチャンネルワイヤレスで直面する多くの課題を解決。 例えば、IEMトランスミッターとマイクロフォンを備えた、バックステージの大規模ラックを単一のスマートなBase Stationに置き換えることが可能
双方向の広帯域伝送により、マルチチャンネルワイヤレスで直面する多くの課題を解決。 例えば、IEMトランスミッターとマイクロフォンを備えた、バックステージの大規模ラックを単一のスマートなBase Stationに置き換えることが可能

WMASに対するゼンハイザー独自のアプローチを発明したのは、ゼバスティアン・ゲオルゲ(Sebastian Georgi)とジャン・ウォーターマン(Jan Watermann)でした。2人が開発したテクノロジーは、OFDM-TDMAのプロプライエタリーバリアントで、双方向マルチチャネルかつ信頼性の高い低レイテンシの通信を実現するためのものでした。2人はこの広帯域アプローチを従来の狭帯域と比較し、次のように話しています。 ​
「個別の200 kHz狭帯域RF搬送波周波数の代わりに、当社は単一の広帯域RFチャンネルを使ってオーディオ伝送を行います。これによって、オーディオと制御データの双方向伝送がより正確に行えるようになります。ゼンハイザーのアプローチでは、広帯域RFチャンネルは、地域の規制によって異なり、6MHzか8MHzのテレビチャンネルとなります。WMASシステムは、このチャンネル内でオーディオリンクを調整します。マイクまたはIEMのいずれであっても、あらゆるオーディオリンクには、オーディオ情報を伝送するための特定のタイムスロットが割り当てられます。IEMとマイクが、ガードバンドによって2つの分離したチャンネルに分けられるのではなく、まったく同じテレビチャンネルに割り当てられるようになったのは、これが初めてです。『順番』が来たときに、すべてのオーディオリンクでRFチャンネルの帯域幅全体が使われるため、RFフェーディングが大幅に抑制されます。これにより8MHz RFチャンネルでのダイバーシティーが40倍に、6MHzテレビチャンネルでは30倍になります。さらに、スペクトル密度が低いため、大規模なフェスティバル会場や隣接する劇場間、あるいは多様なブロードキャスティングを行っている施設などで、周波数の再利用がより簡単にできるようになります」

システムの複雑さを大幅に軽減
Spectera エコシステムで最も驚異的なイノベーションといえるのはBase Station です。32 の入力チャンネルと32 の出力チャンネルを持つこのシングルラックユニットにより、これまでラックに満杯になっていたワイヤレスマイクレシーバーやIEM トランスミッターが不要になります。制作全体を単一の広帯域RF チャンネル(6MHz または8MHz)でまかなえるようになる可能性を秘めています。フットプリントの小ささはボディパックも同様で、マイク/ラインとIEM/IFB の要件に同時に対処できるようになっています。Spectera 製品管理担当のベルント・ノイバウアー(BerndNeubauer)は、次のように述べています。
「たった1 つのパックを持つことで、パフォーマーがとても有用なツールを得られるだけでなく、サウンドエンジニアの仕事も1 つのタイプのパックを持つだけで簡単になりました。必要に応じてIEMをマイクにすばやく追加できるようになります。たった1 つのBase Station と、バックパックおよびアンテナ用の2 つの周波数バリアントであるUHF と1G4 があれば、管理の複雑さも解消されます」

19 インチの1U ラックのスペースで、マイクとIEM を使った制作が完結。Spectera Base Station の下には、充電式BA 70 バッテリーパック用充電モジュールを備えた、L 6000 充電ステーション。Spectera では、Evolution Wireless Digital と同じバッテリーを使用
19 インチの1U ラックのスペースで、マイクとIEM を使った制作が完結。Spectera Base Station の下には、充電式BA 70 バッテリーパック用充電モジュールを備えた、L 6000 充電ステーション。Spectera では、Evolution Wireless Digital と同じバッテリーを使用

ワイヤレスのプロ向けオーディオの未来が到来 – しかも、双方向
Spectera は制御と監視を一変させます。Spectera は予備のチャンネルを用意しているのではなく、貫して双方向通信を継続し、真の意味での完全リモートコントロールを実現します。制御データの永続的なストリーミングによって、オーディオ設定の調整、IEM とマイクレベルの順応、RF の健全性とバッテリー状態の監視などさまざまな処理が可能となります。オーディオと制御データの両方を対象としたAES 256 暗号化(1 万年以上有効なAES 256 CTR モード)により、必要なデータのプライバシー保護が保証されます。

また、すべてのユニットでスペクトルが継続的に感知されるので、他のRF ソースからの潜在的な干渉をスキャンすることができます。Spectera により、実際に使用されているRF チャンネルの「裏側」を初めて見ることができ干渉を検知できるようになります。

優れたオーディオ品質
Spectera はマイク、楽器およびIEM 向けのゼンハイザーならではのデジタルオーディオ品質を実現し、アプリケーションに最適化されたオーディオコーデックを採用しています。また、これらコーデックは32 ビット浮動小数点形式ですべてが内部処理されます。

放送スタジオでモニター用リンクが今すぐ必要ですか? 稼働中のシステムにボディパックを追加するだけで解決できます
放送スタジオでモニター用リンクが今すぐ必要ですか? 稼働中のシステムにボディパックを追加するだけで解決できます

11 のオーディオリンクモードにより制作作業全体を通じて、オーディオ品質、レイテンシ、チャンネル数、ならびに各オーディオリンクの操作範囲を自由かつ柔軟に管理することができます。オペレーターは、リンクの数を絞って品質を上げる方法、あるいは品質を下げてリンクの数を多くする方法のいずれかで、RF を最大限に活用できます。どのオーディオリンクモードが選択されても、Spectera は圧倒的にクリアなサウンドを提供します。Spectera 製品管理担当のベルント・ノイバウアーはさらに次のように話しています。

「とりわけIEM ユーザーには衝撃となるでしょう。Spectera により、デジタルIEM の驚異的な音質の良さとともに、レイテンシが0.7 ミリ秒にまで低下したことによる、正確さを実感できます。デュアルモード伝送により、インイヤチャンネルが明確に分離されるようになり、サウンドステージが改善され、最適なパフォーマンスが生まれるようになります」

同じくSpectera 製品管理担当のベネディクト・ユーエン(Benedikt Euen)も、次のように述べています。
「Spectera は、IEM とマイクをまったく同じテレビチャンネルに共存させることによって、スペクトルリソースをとても大切に使っています。フェスティバルのエンジニア間での周波数調整も簡略化され、ワークフローをより早めることができます。例えば、大きなバンドがフェスティバルでギグの開始を待っている場合、RF のミュートを解除するだけでバンド全体を「オンエア」にすることができます。狭帯域システムによって、周波数と機能の組み合わせが固定されている場合でも、Specteraを通じてショーあるいは制作を柔軟に行えるようになります。追加のIEM が必要になるという心配はありません。別のアーティストに64 のオーディオリンクのどれかを割り当てる必要があっても大丈夫です。」

Spectera コンポーネントの詳細

Base Station – 1U ラックに最大64 のワイヤレスオーディオリンク
ラック取り付け型のBase Station はSpectera エコシステムの核となるものであり、省スペースを実現する機器です。Base Station は最大64 のオーディオリンクに対応し、19 インチの1U ラックのフォーマットで32 の入力チャンネルと32 の出力チャンネルを持つことが可能です。1 つのBaseStation には最大2 つのRF チャネルを実装でき、周波数に依存せずBase Station が関係する個々の現地規制で認定されている周波数域が自動的に適用されます。

Spectera Base Station(前面と後面)

 

Base Station の設計では、冗長性がカギとなりました。Base Station には2 つのPSU、プライマリーとセカンダリーのDante 接続、オプションの冗長なMADI 接続(オプティカルまたはBNC)のための2 つのスロット、および4 つのアンテナゾーンが実装されており追加の周波数域を使用することによって、冗長性が実現されるだけでなく、アンテナゾーンの機能拡張と同期、あるいはシステム容量の増大が可能になります。ユニットのカスケードポートは、将来のファームウェアリリースによって利用可能となります。注目すべきポイントとしてBase Station にはRF コンポーネントがないため、ラック内の他のワイヤレス機器との競合がないことがあげられます。

多機能のSEK ボディパック – マイクとIEM の両方に対応
全く同じボディパックでIEM とマイクロフォンの両方、あるいは楽器の要件に対応するため、SEKも省スペース機器でありショーの途中でも柔軟に判断および変更を行うことが可能です。

7/マイク/楽器のトランスミッターとIEM レシーバーとして同時に使用できるSpectera SEK ボディパック

このボディパックには、ラベリアマイクまたはハンドセットマイク(ゼンハイザーの多様なモデルから選択可能)向けの3 ピンコネクターか楽器用ケーブル(例えばCI 1-4 等)を取り付けることができます。3.5 mm のヘッドフォンジャックはゼンハイザーのプロフェッショナル向けインイヤフォンと接続され、インピーダンスにマッチしたハイパワーヘッドフォンアンプが搭載されています。SEKには耐久性に優れたディスプレイが付いており、ユニットの電源が切れているときもデバイス情報がこのディスプレイに表示され続けます。

このボディパックは、UHF(470~608 MHz と630~698 MHz)と1G4(1350~1400 MHz と1435~1525 MHz)の周波数バリアントでご利用いただけます。電源はBA 70 充電式バッテリー(Evolution Wireless Digital と同じもの)となっており、選択された構成にもよりますが最大7 時間の稼働が可能です。

DAD アンテナ – 他とは一線を画したアンテナ
IP 54 の保護が施されたDAD アンテナはマイク/ライン信号、IEM 信号および制御データを同時に管理する送受信アンテナです。このアンテナには、システムのRF コンポーネントが搭載されており、ブースター、スプリッターおよび結合器を使う必要がありません。RF はここでデジタル化されるため、BNC コネクターおよび同軸ケーブルなしでDAD アンテナがBase Station に接続されますが、別途RJ 45 コネクターとCAT 5e ケーブルが必要となります。RJ 45 コネクターとCAT 5e ケーブルは同軸ケーブルに比べ、扱いやすさと費用対効果の高さ、ケーブル損失の少なさが評価されています。アンテナの電源は、PoE 経由のBase Station です。

Spectera アンテナのバリアント:1G4(左)とUHF(右)
Spectera アンテナのバリアント:1G4(左)とUHF(右)

ゼンハイザーでは、長さが10 m、25 m および50 m の高性能CAT 5e ケーブルを取り揃えています。このケーブルをファイバーのレイヤ1 メディア変換に使用することで、大規模な会場にも対応可能です。

LinkDesk ソフトウェア
Base Station をSpectera エコシステムの中心とすることで、新登場となるLinkDesk ソフトウェアはその大黒柱となります。このデスクトップアプリケーションはMac でもそのほかのPC でも使用可能で、これらをリモート管理/監視センターへと変容させます。

Mac またはPC をリモート管理/監視センターへと変容させるLinkDesk ソフトウェア
Mac またはPC をリモート管理/監視センターへと変容させるLinkDesk ソフトウェア

オペレーターはオーディオリンクモードを柔軟に選択することができ、オーディオ品質およびレイテンシ、オーディオの利用可能なリンクと範囲を変えられるほか、すべてのオーディオ設定とRF 状況が可視化された状態で完全なリモート管理とシステム全体の監視ができるようになります。

Spectera 製品管理担当のベネディクト・ユーエンは、このように説明しています。
「マルチチャネルワイヤレスシステムを構成するのはソフトウェアという観点で考えても、本当に難しい課題です。そのため、私たちはシステム管理をできる限り早く、直感的にできるようにするため、支援的な機能を導入しました。LinkDesk では制作そのものも保存されますので、オペレーターはシステム構成を迅速に再現しイベントでの時間節約ができるようになります」。スマート通知が追加の機能となります。

LinkDesk ソフトウェアは、ノードベースの単一のライセンスを通じて、Base Station の稼働も管理します。現地の具体的なライセンスコードを入力することにより、ソフトウェアを通じて周波数、RFチャンネルの帯域幅および伝送電力に対する現地の規制要件の範囲内でシステムが運用されるようになり、オペレーターはコンプライアンスに対する心配から解放されるようになります。

発売予定とエコシステムの発展
Spectera は、本日より事前予約が可能となります。出荷の開始日は2025 年の前半に発表される予定です。日本国内での発売は未定となります。
Spectera はハードウェア、ソフトウェア、機能およびサービスの継続的な向上によって、今後も進化を続けます。ハードウェアでは、SKM ハンドヘルドトランスミッターが次に追加される予定となっています。機能に関しては、プロ向けメディア信号のSMPTE ST 2110 規格ファミリーの導入が予定されています。これは、Merging Technologies のHapi を使って行うことができます。

絶えず拡大するエコシステムで、放送局向けとして、ST 2110 の導入が予定されているSpectera
絶えず拡大するエコシステムで、放送局向けとして、ST 2110 の導入が予定されているSpectera

 

「Spectera のエコシステムは、ワイヤレスの利用をこれまで困難にしてきた問題を業界が克服するためのツールです」とSpectera 製品管理担当のベルント・ノイバウアーは言います。

「当社はこの新しいテクノロジーのために業界と密接に連携し、お客様からの貴重なフィードバックをシステムの性能、利用シナリオおよび将来のアップデートに反映させてまいります」

今後登場予定の新アプリケーション
アンドレアス・ゼンハイザーは、次のように話しています。
「Spectera はマルチチャンネルワイヤレスオーディオに革命をもたらすだけでなく、たくさんの新たな機会をもたらしてくれます。没入感のある3D オーディオも、このような機会の1 つです。RFでのすべてのオーディオでワードクロックが同期されるため、Spectera は位相同期のワイヤレスオーディオを取り込み、没入感のある録音と再生を可能にする初のソリューションとなります」

ダニエル・ゼンハイザーは、最後にこのように述べています。
「このエコシステムが促進する新しいワークフローにより、ワイヤレスオーディオテクノロジーの新しいクリエイティブな利用方法が必ず見えてくるでしょう」

 

本リリース内の画像はこちらからダウンロードいただけます。

 

ゼンハイザーブランドについて
オーディオと共に生きるゼンハイザー。世の中を変えるオーディオ製品を作りだすことに情熱を捧げ、オーディオの未来と素晴らしいサウンド体験を築く。これこそが75年以上もの歳月、変わらずに掲げてきたゼンハイザーの意義です。Sennheiser electronic SE & Co. KGはマイク、会議システム、ストリーミング技術、モニタリングシステムなどの様々なプロオーディオ事業を展開しながら、ヘッドホン・イヤホン、サウンドバー、スピーチ-エンハンスヒアラブルデバイスなどの一般消費者向け事業をSonova Holding AGへのブランドライセンス事業で展開しています。

www.sennheiser.com
​​www.sennheiser-hearing.com


永富 輝石

コミュニケーションズマネージャー, ゼンハイザージャパン株式会社

中村 美里

ゼンハイザージャパン PR事務局

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ゼンハイザーブランドについて

 

オーディオと共に生きるゼンハイザー。世の中を変えるオーディオ製品を作りだすことに情熱を捧げ、オーディオの未来と素晴らしいサウンド体験を築く。これこそが75年以上もの歳月、変わらずに掲げてきたゼンハイザーの意義です。Sennheiser electronic SE & Co. KGはマイク、会議システム、ストリーミング技術、モニタリングシステムなどの様々なプロオーディオ事業を展開しながら、ヘッドホン・イヤホン、サウンドバー、スピーチ-エンハンスヒアラブルデバイスなどの一般消費者向け事業をSonova Holding AGへのブランドライセンス事業で展開しています。

 

 

www.sennheiser.com

www.sennheiser-hearing.com